天皇からのお言葉

神代から昭和天皇までの

詔(みことのり)とは、天皇の命令であり、受けたなら かならず謹んでお従いする。天皇からのお言葉である。 ここに信じられないほどすごい本がある。 神代から、昭和19年9月7日の昭和天皇の詔まで、 すべての天皇のみことのりが載っている。こんな本があるとは びっくりだ。 昭和19年9月7日の詔は「第2106詔」であり、 第一の詔は「天神」修理固成の神勅である。 「ここに神もろもろの命以(みことも)ちて、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)・ 伊邪那美命(いざなみのみこと)二柱の神にこのただよへる国を 修理固(つくりかた)め成せ と詔(のりご)ちて、天(あめ)の沼矛(ぬぼこ)を賜ひて言依さし賜ひき」 とある。 第五詔には、あの有名な天照大神のお言葉が登場する。 宗像三神天孫奉助の神勅 「すなわち日神(ひのかみ)の生みませる三女神(みはしらのひめがみ) をもって、筑紫の洲(くに)に降(あまくだ)りまさしめ、よりて教へて日はく、 汝三神(いましみはしらのかみ)、宜しく道の中に降居して、天孫(あめみま)を 助け奉り、天孫のために所祭(いつか)れよ。と。」 これらのお言葉を読んでいると、神話の世界に引き込まれる。 いまざっと気になる箇所をまずは読んでいるところだが、面白い興味津々の 詔があった。第1400詔として「米国人フルベッキに下し給える勅語」。 「汝久しく我が国に在り、教導を奉し生徒を訓導す。朕深く之を嘉す。 汝の才学浩博にして、よく薫陶の功を奏し、後進をしてその成業を 速やかならしむ。もっとも欣喜する所なり。爾後益々勉励し、学術を 盛んにせんことを望む」とある。 その他、気になって読んでみたところに、第1742詔に 「日清戦役後陸海軍人に賜りし勅諭」があり、そのお心遣いに 涙が出てくる。
清水克衛

神代から昭和に至る編年体和文訳詔勅集みことのりは日本人の心の源を識る貴重な聖典です。本書は、美しいことば・文章に触れつつ、一貫した大御心と日本の歴史が読みとれる労作です。終戦直前、辻善之助・西晋一郎・久松潜一ら多くの学者、文化人から推薦された『神典みことのり』は戦禍に遭い埋もれていましたが、この度森清人先生顕彰会の尽力を得、五十年振りに、しかも正字体正仮名遣い振り仮名付の新製版により陽の目を見ることになりました。

わが国史における詔勅の重要性については今改めていうを要しないが、その中には凡ゆる社会情勢に亘って、万般のことが如実に網羅されているので、詔勅史は正にその儘わが国史の実体に外ならない。還言すれば歴代天皇の大御心の発露が具体的に陳べられてあって、実にわが国体顕現の生きた実例であるといってよいであろう。 しかもその詔勅が古来その儘の形で、無慮数千篇も伝承保存されていることは歴史の偉観であるが、それらは各種文献に散存しているために、一括して痛感することは容易ではなく、それらを総集した「詔勅全集」の編纂が強く要望されていた。前人未踏のこの大業を森先生は畢生の大著として成就されたが、時恰も戦災の厄に遭い刊行に至らなかったことは、邦の為道の為にも痛嘆の至りであった。併しこの度、皇太子殿下御成婚記念の事業として、全く粧いを新たにして再刊されるに至ったことは、文教の現況に鑑み慶祝にたえない。これを機として今後歴史の研究や歴史教育が、必ず大きく見直されるであろうことを信じ且つ期待してやまない次第である。
鳥取大学・兵庫教育大学名誉教授 井上順理